経営業務管理責任者とは?改正ポイントと要件詳細

建設業許可を取得するうえで、多くの事業者がつまずくのが経営業務の管理責任者(通称「経管(けいかん)」)の要件です。経営業務の管理責任者とは、建設業の経営について一定期間の実務経験を持つ常勤の役員等を指します。建設業法第7条第1号に基づく許可要件であり、この要件を満たさなければ許可を受けることはできません。
令和2年(2020年)10月の建設業法改正により、経管の要件は大きく見直されました。従来は「特定の個人」に経営経験が集中していなければならない仕組みでしたが、改正後は「組織としての経営管理体制」でも要件を満たせるようになっています。この記事では、改正後の要件を正確に整理し、愛知県での申請実務を踏まえた満たし方のポイントを解説します。
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経営業務の管理責任者の役割と制度の趣旨
建設業は、受注生産・屋外作業・工期管理など、他の産業とは異なる特有の経営上のリスクを抱えています。資材の仕入れ、下請業者との契約、天候による工期変動への対応など、経営判断を誤れば工事の完成や代金の支払いに直接影響します。
そのため国土交通省は、建設業許可の要件として「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力」を求めています。これが経営業務の管理責任者の制度です。法人であれば常勤の役員のうち1人が、個人であれば本人または支配人が、建設業の経営に関する一定の経験を有していなければなりません。
経管の設置は許可の取得時だけでなく、維持の要件でもあります。許可取得後に経管が退職し後任が不在となった場合は、建設業法第29条第1項第1号に基づき許可の取消しとなります。事業承継や役員交代の際には、後任者の確保を必ず事前に計画しておく必要があります。
出典:国土交通省「許可の要件」
令和2年改正で経営業務の管理責任者の要件はどう変わったか
改正前の制度と課題
改正前は、「許可を受けようとする建設業に関し5年以上」または「許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し6年以上」の経管経験が求められていました。つまり、業種ごとに経験年数が異なり、申請する業種と経験業種が一致しない場合は年数が加重されていたのです。
この仕組みでは、経管になれる人材が限定され、中小企業の事業承継や新規参入が難しいという課題がありました。
改正後の3つのルート(施行規則第7条第1号イ)
令和2年10月の改正により、建設業法第7条第1号は「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること」という能力基準に改められました。業種ごとの区分は廃止され、建設業の経験であれば業種を問わず通算できるようになっています。
具体的な要件は以下の3パターンです。
| ルート | 対象者 | 必要な経験 |
|---|---|---|
| イ(1) | 常勤役員等 | 建設業に関し5年以上の経管としての経験 |
| イ(2) | 常勤役員等 | 建設業に関し5年以上、経管に準ずる地位(執行役員等、権限委任を受けた者)での経営管理経験 |
| イ(3) | 常勤役員等 | 建設業に関し6年以上、経管に準ずる地位での補佐経験 |
最も多いのはイ(1)のパターンです。法人の取締役や個人事業主として、建設業の経営に5年以上携わった経験があれば該当します。
改正後の「組織体制」ルート(施行規則第7条第1号ロ)
改正の最大のポイントは、常勤役員等の個人的な経験だけでなく、「常勤役員等+直接に補佐する者」の組織体制でも要件を満たせるようになったことです。
| 体制パターン | 常勤役員等の要件 | 補佐者の要件 |
|---|---|---|
| ロ(1) | 建設業の役員経験2年以上+役員等または役員に次ぐ地位での経験が通算5年以上 | 当該建設業者等での財務管理・労務管理・業務運営それぞれ5年以上の経験者を配置 |
| ロ(2) | 役員経験5年以上(うち建設業の役員経験2年以上) | 同上 |
補佐者は1人で複数の業務経験を兼ねることができます。たとえば経理と労務の両方を10年以上担当してきた社員であれば、財務管理と労務管理の2つを満たせます。この制度により、経管としての5年経験がない代表者でも、社内体制の整備で許可要件をクリアできる道が開かれました。
経営業務の管理責任者の要件を証明するための書類
要件を満たしていても、書類で証明できなければ許可は下りません。愛知県の知事許可申請では、以下のような確認資料の提出が求められます。
経営経験を証明する書類
経営経験の証明は「地位の証明」と「業務実態の証明」の2つの軸で行います。
| 証明の目的 | 主な書類 |
|---|---|
| 役員としての地位 | 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)・閉鎖登記簿謄本 |
| 個人事業主の地位 | 確定申告書の控え(税務署受付印付き)・開業届 |
| 建設業の実態 | 建設業許可通知書の写し、または工事請負契約書・注文書・請求書等(経験期間分) |
許可業者での経験であれば、許可通知書の写しで業種と期間を証明できます。一方、無許可業者や個人事業での経験を使う場合は、経験期間中の工事実績を月単位で証明する書類が必要です。愛知県では、原則として経験年数分の工事実績書類の提出を求められるため、5年分・6年分の書類を漏れなく準備することが重要です。
常勤性を証明する書類
現在の愛知県の手引きでは、常勤性の証明として「健康保険・厚生年金保険の標準報酬決定通知書」「資格情報のお知らせ・資格確認書」などが確認資料として位置づけられています。住民票の住所と営業所の距離が遠い場合は、通勤の合理性を別途説明する必要がある点にも注意しましょう。
経営業務の管理責任者の要件を満たせない場合の対処法
「社内に5年以上の経管経験者がいない」場合の状況に応じた主な対処法を紹介します。
対処法①:「常勤役員等+補佐者」の体制を活用する
前述のロ(1)・ロ(2)のパターンを使えば、常勤役員等に求められる建設業の経営経験は2年以上で足ります。社内に財務管理・労務管理・業務運営の経験者がいれば、補佐者として配置することで要件をクリアできる可能性があります。
ただし、この体制で申請する場合は個別審査となります。愛知県でも、事前に管轄の建設事務所へ相談するよう案内されています。証明書類も通常より多くなるため、早めの準備が必要です。
対処法③:経験年数が足りるまで待つ
現在の役員としての経験が3〜4年であれば、5年に達するまで待ってから申請する方法もあります。その間に必要な書類を計画的に整備し、申請時に不足が生じないよう準備を進めておくことが重要です。
改正前後の経管要件 比較一覧表
| 項目 | 改正前(令和2年9月まで) | 改正後(令和2年10月以降) |
|---|---|---|
| 業種ごとの区分 | あり(同業種5年・他業種6年) | 廃止(建設業であれば業種不問) |
| 必要経験年数 | 5年または6年(業種による) | 5年(イ(1)(2))・6年(イ(3)) |
| 組織体制での充足 | 不可 | 可能(ロ(1)(2):常勤役員+補佐者) |
| 社会保険の加入 | 許可要件ではない | 許可要件(施行規則第7条第2号) |
| 「経営業務の管理責任者」の名称 | 条文上に明記 | 条文上は「常勤役員等」に変更 |
経管にまつわるリスクと注意点
実務で特に危険なのは、経管を務める代表取締役が病気や事故で突然離職するケースです。1日でも不在となれば要件欠如に該当するため、社内に後任候補を常に準備しておくことが不可欠です。愛知県の手引きでも、「不在期間が生じないよう、あらかじめ要件を満たす者を選任するなど事前の準備が必要」と明記されています。
経管の変更届は、変更が生じた日から2週間以内に提出する義務があります。届出が遅れると行政指導の対象となる場合もあるため、役員変更が見込まれる場合は早めに行政書士へご相談ください。
よくある質問(FAQ)
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経営業務の管理責任者(経管)とは何ですか?
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建設業許可を受けるために必要な常勤の役員等で、建設業の経営について5年以上の実務経験を有する者です。建設業法第7条第1号および施行規則第7条第1号に定められています。
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個人事業主の経験でも経管の要件を満たせますか?
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はい、個人事業主として建設業を5年以上営んだ経験は経管の要件として認められます。確定申告書と工事実績書類で証明します。
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愛知県で経管の常勤性を証明するにはどの書類が必要ですか?
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健康保険・厚生年金の標準報酬決定通知書、資格確認書などで証明します。従来の健康保険証による証明は新規発行終了に伴い移行中です。住民票で住所の確認も行われます。
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|---|---|
| 建設業許可新規申請 | 150,000円〜 |
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