【まとめ】育成就労 介護分野の分野別運用方針・上乗せ基準
技能実習に代わる育成就労制度は2027年4月1日から運用開始です。分野別運用方針、介護分野の上乗せ基準告示により、入国後講習の時間数や事業所ごとの受入れ人数枠まで、数値レベルで要件が確定しています。
介護分野は、19の特定産業分野のうち育成就労の対象となる17分野の一つです。ただし他分野と比べて要件が明確に重く、就労開始時点からA2.2相当以上の日本語能力が必要で、転籍制限期間も上限の2年が設定されています。
※本記事は執筆時点(2026年9月)に確認できた公表情報に基づいています。要件や運用は改正される可能性がありますので、必ず最新の情報をご確認ください。
介護分野における育成就労の位置づけ
育成就労は「日本での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成し、あわせて当該分野の人材を確保する」を目的とする制度です。
分野別運用方針では、特定技能外国人、育成就労外国人の人材像を下記のようにと書き分けています。
| 制度 | 人材像 |
|---|---|
| 特定技能 | 専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する人材 |
| 育成就労 | 介護分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有する人材の育成と確保 |
なお介護分野には特定技能2号がありません。その代わり、介護福祉士の国家資格を取得して在留資格「介護」へ移行するルートがあり、在留期間の上限がなくなり家族帯同も可能になります。
育成就労→特定技能1号→介護福祉士→在留資格「介護」という長期のキャリアパスを描けるのが介護分野の特徴です。
受入れ見込数と人手不足の状況
分野別運用方針は、第9期介護保険事業計画をもとに令和10年度に必要となる就業者数を235万7,300人と推計しています。生産性向上と、処遇改善・高齢者や女性の就業促進による追加的な国内人材確保を進めてもなお、16万700人の人手不足が見込まれます。
| 区分 | 受入れ見込数 | 期間 |
|---|---|---|
| 介護分野全体 | 16万700人 | 令和6年度〜令和10年度(5年) |
| 特定技能1号 | 12万6,900人 | 同5年 |
| 育成就労 | 3万3,800人 | 令和9年度〜令和10年度末 |
この数字は目安ではなく受入れの上限として運用されます。見込数を超えることが見込まれる場合、育成就労計画の認定停止や在留資格認定証明書の交付停止が求められる仕組みです。
人手不足の裏づけとして示された有効求人倍率は、令和6年度で4.08倍。全都道府県で2.00倍以上であり、愛知県も例外ではありません。
業務区分と従事できる業務
業務区分は「介護」の1区分のみで、従事する業務は身体介護等です。育成就労では、この身体介護等が「主たる技能」に設定されます。上乗せ基準告示も、育成就労を行わせる事業所の要件として「介護等の業務を行うものであること」を第一に掲げています。
日本人職員が通常従事する関連業務(掲示物の管理、物品の補充など)に付随的に従事することは差し支えありません。
訪問介護等への従事
訪問系サービスは、一定の要件下で認められます。従事できるのは実務経験(原則1年以上)等を有する育成就労外国人のみで、利用者等への説明に加え、次の5点の遵守を求めています。
- 訪問系の業務の基本事項、生活支援技術、利用者等とのコミュニケーション、日本の生活様式などに関する講習を行う
- 一人で適切に行えると認められるまでの一定期間、責任者等が同行するなどの必要な訓練を行う
- 業務内容を丁寧に説明して意向を確認しつつ、業務の具体的内容・将来のキャリア目標・事業所の支援内容等を記載したキャリアアップ計画を作成する
- ハラスメント等の相談窓口の設置等の措置、ICTの活用等による緊急時の連絡体制の整備
厚生労働省の資料では、あわせて介護職員初任者研修課程等の修了が要件として整理されています。
技能・日本語能力の段階的な要件
介護分野は、就労開始時点からA2.2相当以上(JLPT N4、JFT-Basic等)が求められます。他の多くの分野が開始時A1相当以上であることと比べ、明確に高い設定です。
| 時期 | 技能水準 | 日本語能力水準 |
|---|---|---|
| 育成就労の開始まで | ― | A2.2相当以上 |
| 開始後1年経過時まで | 介護育成就労評価試験(初級) | A2.2相当以上+日本語学習プランの作成 |
| 本人意向による転籍時 | 介護育成就労評価試験(初級) | A2.2相当以上 |
| 育成就労の終了まで | 介護育成就労評価試験(専門級) | A2.2相当以上+介護特定技能評価試験(日本語) |
| 特定技能1号 | 介護特定技能評価試験(技能)等 | A2.2相当以上+介護特定技能評価試験(日本語) |
なお育成就労全体のルールとして、3年間でA2相当を目標とする100時間以上の日本語講習の機会を提供する義務があります。介護は開始前からA2.2が必要ですが、この100時間講習を実施しても1年経過時の日本語学習プランが不要になるわけではありません。
入国後講習の時間数
上乗せ基準告示は、入国後講習の内訳まで具体的に定めています。技能実習の介護職種と同水準ですが、根拠が新しい告示に置き換わっている点に注意してください。
日本語科目:総時間数240時間以上
| 教育内容 | 標準時間数 (時間) |
|---|---|
| 総合日本語 | 100 |
| 聴解 | 20 |
| 読解 | 13 |
| 文字 | 27 |
| 発音 | 7 |
| 会話 | 27 |
| 作文 | 6 |
| 介護の日本語 | 40 |
| 合計 | 240 |
B1相当以上が証明されている場合は、発音7・会話27・作文6・介護の日本語40の合計80時間以上に短縮されます。また、入国前講習で日本語科目を受講している場合は、その教育内容と時間数に応じて入国後講習の時間数を一部免除できます。
講義を行う者は、大学(短期大学を除く)または大学院で日本語教育に関する課程を修めて卒業・修了した者、その他これと同等以上の能力を有すると認められる者に限られます。
技能の修得に資する知識の科目:42時間以上
介護の基本Ⅰ・Ⅱ、コミュニケーション技術、移動の介護、食事の介護、排せつの介護、衣服の着脱の介護、入浴・身体の清潔の介護の7項目を各6時間、合計42時間です。講師は、介護福祉士養成校等の教員として介護領域の教育内容を講義した経験を有する者などに限られます。
入国後講習期間中は業務に従事させられません。240時間は実働でおよそ1か月半に相当するため、受入れ後の人員配置計画に必ず織り込んでください。
受入れ人数枠
介護分野の人数枠は、育成就労を行わせる事業所ごとの常勤介護職員数を基準とします。常勤介護職員とは「介護等を主たる業務として行う常勤の職員」で、育成就労外国人、EPA介護福祉士候補者は除外され、経過措置で在籍する技能実習生も附則により除外されます。事務職や就労支援員などは主たる業務が介護等ではないため含まれません。
監理型育成就労の場合(一般的なケース)
| 常勤介護職員 | 人数枠 | 優良(2倍) | 優良+指定区域(3倍) |
|---|---|---|---|
| 301人以上 | 総数の20分の3 | ×2 | ×3 |
| 201〜300人 | 45人 | 90人 | 135人 |
| 101〜200人 | 30人 | 60人 | 90人 |
| 51〜100人 | 18人 | 36人 | 54人 |
| 41〜50人 | 15人 | 30人 | 45人 |
| 31〜40人 | 12人 | 24人 | 36人 |
| 21〜30人 | 9人 | 18人 | 27人 |
| 11〜20人 | 6人 | 12人 | 18人 |
| 10人以下 | 3人 | 6人 | 9人 |
ただし告示は、事業所の育成就労外国人の総数が当該事業所の常勤介護職員の総数を超えないことという上限を別に定めています。
「優良」は、技能・日本語能力の修得実績、育成体制、待遇、法令違反や行方不明者の発生状況、保護・支援の体制、地域社会との共生に向けた取組を総合評価して「高い水準」と認められる場合です。
3倍枠は、優良な監理支援機関の監理支援を受けていること(介護分野の実績等も評価対象)と、事業所の住所が指定区域にあることが必要です。
愛知県は原則として指定区域から除外されています(東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫の8都府県以外は全域が指定区域)。
単独型育成就労の場合
継続的・安定的に育成就労を実施できる体制があると認められた場合は上記の表と同じですが、それ以外の単独型は常勤介護職員の総数の20分の3(優良なら10分の3)です。
事業所・体制に関するその他の上乗せ条件
事業所の要件
介護等の業務を行う事業所であることに加え、次のいずれかに該当する必要があります。
- 開設後3年以上経過している
- 同一法人において介護等の業務を行う他の事業所の開設後3年以上経過している
- 事業所を経営する法人が、
(ア)利用者・家族が安心してサービスを利用できるよう外国人への研修体制とその実施が確保されている
(イ)外国人・職員・利用者等からの相談体制が確保されている
(ウ)受入れ開始前に職員・利用者・家族等への説明会等が行われている
(エ)受入れに関する法人内の協議体制が確保されている、
のすべてに該当すること。
育成体制
育成就労指導員は、事業所ごとに、(育成就労外国人の数)÷5以上を選任し、うち1名以上は介護福祉士の資格を有する者でなければなりません。外国人10名なら指導員2名以上、うち1名以上が介護福祉士等という計算です。
また、夜勤業務その他少人数の状況下での業務や緊急時対応が求められる業務を行わせる場合は、利用者の安全確保等のために必要な措置を講ずることとされています。育成就労外国人以外の介護職員を同時に配置することが求められること、事業所の判断で夜勤等を2年目以降に限定することも考えられる旨が定められる予定と示されています。
協議会への対応
申請者は、介護分野に係る分野別協議会において協議が調った事項に関する措置を講ずること、同協議会に必要な協力を行うこと、厚生労働大臣等が行う調査・指導・情報収集・意見聴取等に協力することが求められます。
育成就労計画の認定申請および在留諸申請の前に「介護分野における特定技能・育成就労協議会」の構成員となり、受入事業所情報が登録された入会証明書の発行を受ける必要があります。
監理支援機関
介護分野の監理支援機関には、5年以上介護等の業務に従事した経験を有する介護福祉士(またはこれと同等以上の専門的知識・技術を有すると認められる者)である役員または職員の配置が求められます。
また、監理支援機関になれる法人類型として、介護・医療に従事する事業者により構成される全国的な団体(支部を含む)と、社会福祉法上の社会福祉連携推進法人が追加されました。委託先がこの体制を満たしているかは、契約前に必ず確認してください。
転籍ルール(介護は2年)
育成就労では本人意向による転籍が一定要件のもとで認められます。転籍制限期間は分野ごとに1年〜2年の範囲で設定され、介護分野は上限の2年です。
2年とされた理由は以下の通りです。
- 介護が継続した利用者のいる対人支援サービスであり、同一事業所での継続的な実践を通じて信頼関係を醸成しながら専門職としての知識・技術・倫理を修得する必要があること
- 大都市圏の需要が高く、制限がなければ地方で就労を開始した人材が賃金の高い都市部へ過度に流出するおそれがあること(名古屋圏の事業者にとっては、流入側にも流出側にもなり得る論点です。)
本人意向による転籍が可能となるのは次の要件を全て満たす場合です。
- 同一の育成就労実施者のもとでの就労が2年を超えている
- 介護育成就労評価試験(初級)に合格している
- 日本語能力がA2.2相当以上
- 同一の業務区分内
1年を超える転籍制限期間を設定する育成就労実施者は、介護職員等処遇改善加算の取得等の要件を満たすことに加えて、育成就労キャリア支援プランを作成する必要があります。
特定技能1号への移行
育成就労終了時に求められる水準(下記参照)は、特定技能1号の水準と同等です。3年の育成就労を修了して試験に合格すれば、特定技能1号へ移行できます。不合格の場合も、再受験のために最長1年の在留継続が認められます。
介護育成就労評価試験(専門級)
A2.2相当以上
介護特定技能評価試験(日本語))
なお雇用形態は、育成就労・特定技能1号ともに直接雇用に限られ、派遣は認められません。
愛知・名古屋の介護事業者が今から進めるべき準備
制度開始は令和9年4月ですが、より早い段階から受入準備に取り掛かる必要があります。
まずは、事業所要件の確認と、複数事業所を持つ法人ならどの事業所で受け入れるかの決定。そして事業所ごとの常勤介護職員数の棚卸しです。
体制面では、介護福祉士を含む育成就労指導員の候補者選定、夜勤に入れるまでの段階的な育成手順の言語化、講習期間中の人員穴埋め計画が必要です。あわせて、協議会への入会準備、監理支援機関の選定を進めます。
よくある質問
-
技能実習生をそのまま育成就労に切り替えられますか。
-
施行日前に入国して現に技能実習を行っている場合は技能実習制度のルールが適用され、育成就労へ移行することはできません。
育成就労に関するご相談は、みらい行政書士事務所へ
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