【まとめ】育成就労 農業分野の分野別運用方針・上乗せ基準
育成就労制度は、2027年4月1日から運用が開始されます。
農業分野には、他の分野にはない際立った特徴が3つあります。
- 労働者派遣形態での受入れが認められている数少ない分野
- 労働基準法第41条の適用除外が認められないことが告示で明記され
- 育成・キャリア形成プログラムが既に決定・公表されている
農業分野は令和2年代に入り、約3万人の技能実習生受け入れてきた分野です。とりわけ耕種農業では技能実習生数が全業種中3番目に多く、技能実習制度の解消がもたらす影響は極めて大きいと考えられます。
農業分野における育成就労の位置づけ
育成就労は、特定技能1号の水準の技能を有する人材を3年間の就労を通じて育成し、あわせて分野の人材を確保することを目的とする在留資格です。
キャリアパスの面では、農業分野には特定技能2号が設定されています。育成就労(3年)から特定技能1号(通算5年)を経て特定技能2号に進めば、在留期間の更新回数に制限がなくなり、要件を満たせば配偶者・子の帯同も可能になります。
受入れ見込数と人手不足の状況
分野別運用方針は、令和10年度の農地面積を417万ヘクタールと見込んだ場合に必要となる就業者数を136万8,000人と推計しています。現時点の就業者数138万7,000人に対し、令和10年度の就業者数は97万9,000人まで減少する見込みで、同年度には38万9,000人程度の人材が不足すると見込まれています。
生産性向上、国内人材確保により、一定数の人手不足が緩和されると見込まれるものの、なお9万9,600人程度の人手不足が残ります。この9万9,600人が分野全体の受入れ見込数であり、その内訳は次のとおりです。
| 区分 | 受入れ見込数 | 対象期間 |
|---|---|---|
| 分野全体 | 99,600人 | ― |
| 特定技能1号 | 73,300人 | 令和6年度から5年間(令和10年度末まで) |
| 育成就労 | 26,300人 | 令和9年度から2年間(令和10年度末まで) |
育成就労の枠2万6,300人は2年間分としては決して大きくないため、早期からの準備が重要です。
業務区分と従事できる業務
農業分野の業務区分は、耕種農業全般と畜産農業全般の2区分です。特定技能と育成就労で業務区分は統一されています。
耕種農業全般では栽培管理、農産物の集出荷・選別等が、畜産農業全般では飼養管理、畜産物の集出荷・選別等が従事業務となります。
分野別運用方針は、これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務について、具体例として農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業、冬場の除雪作業等を挙げ、これらに付随的に従事することは差し支えないとしています。
技能水準と日本語能力水準
育成就労では、就労開始時、1年経過時、終了時という節目ごとに技能水準と日本語能力水準が段階的に確認されます。農業分野が定める水準は次のとおりです。
| 時期 | 技能水準 | 日本語能力水準 |
|---|---|---|
| 就労開始前 | ― | A1相当以上の試験合格、またはA1相当講習の受講 |
| 1年経過時 | 育成就労評価試験(初級) | A1相当以上 |
| 育成就労終了時・特定技能1号 | 特定技能1号評価試験または育成就労評価試験(専門級) | A2.2相当以上 |
| 特定技能2号 | 特定技能2号評価試験+実務経験 | B1相当以上 |
1年経過時の試験は不合格でも育成就労を継続できます。ここで在留が打ち切られるわけではありません。一方、育成就労終了時の試験に不合格となった場合は、一定の要件の下で再受験のため最長1年間の在留延長が認められます。
入国後講習の内容と時間数
監理型育成就労の場合、入国後講習の総時間数は日本語能力の有無と入国前講習の実施状況により次のように変わります。
| パターン | 入国前講習 | 入国後講習の総時間数 |
|---|---|---|
| A(A1相当の試験に不合格または未受験) | なし | 320時間以上 |
| A | 過去6月以内に160時間以上 | 160時間以上 |
| B(A1相当の試験に合格済み) | なし | 220時間以上 |
| B | 過去6月以内に110時間以上 | 110時間以上 |
講習科目は、日本語、本邦での生活一般に関する知識、法的保護に必要な情報、本邦での円滑な技能の修得に資する知識の4科目です。農業分野の入国後講習では、安全衛生に関する講義の講師に農林水産研修所の研修受講という資格要件が課されます。
受入れ人数枠
監理型育成就労の受入れ人数枠は、育成就労実施者の常勤職員の総数に応じて次のように定められています。この枠は1年目から3年目までの育成就労外国人の合計に対する上限となります。
| 常勤職員の総数 | 基本人数枠 | 優良(2倍) | 優良+指定区域+優良監理支援機関(3倍) |
|---|---|---|---|
| 301人以上 | 総数の20分の3(15%) | 総数の10分の3(30%) | 総数の20分の9(45%) |
| 201〜300人 | 45人 | 90人 | 135人 |
| 101〜200人 | 30人 | 60人 | 90人 |
| 51〜100人 | 18人 | 36人 | 54人 |
| 41〜50人 | 15人 | 30人 | 45人 |
| 31〜40人 | 12人 | 24人 | 36人 |
| 9〜30人 | 9人 | 18人 | 27人 |
| 8人 | 9人 | 18人 | 24人 |
| 7人 | 9人 | 18人 | 21人 |
| 6人 | 9人 | 18人 | 19人 |
| 5人 | 9人 | 15人 | 16人 |
| 4人 | 9人 | 12人 | 13人 |
| 3人 | 9人 | 10人 | 11人 |
| 2人 | 6人 | 7人 | 8人 |
| 1人 | 3人 | 4人 | 5人 |
常勤職員の算定では、育成就労外国人および技能実習生は含めません。一方、特定技能外国人は常勤職員に含まれます。
上乗せ条件
農業分野の上乗せ基準告示が定める条件を順に確認します。
雇用経験の要件
労働者を6月以上継続して雇用した経験またはこれに準ずる経験を有することが求められます。ただし、労働者派遣型育成就労を行わせるものである場合は除かれます。
安全衛生講義の講師要件
前述のとおり、農林水産研修所が実施する労働安全衛生規則第35条第1項各号に関する研修を受講した者が講義を行うこととしていることを求めるものです。
育成就労を行わせる体制の基準
下記3点に該当することが求められます。
- 農業分野に係る分野別協議会において協議が調った事項に関する措置を講ずること
- 協議会に対し必要な協力を行うこと
- 農林水産大臣が行う調査・指導・情報の収集・意見の聴取その他業務に対して必要な協力を行うこと
この分野別協議会が「農業育成就労協議会」です。地方出入国在留管理局に対する在留諸申請の際には、農業育成就労協議会の構成員であることを明らかにする書類の提出が必要です。
労働基準法第41条の適用除外の禁止
農業分野に固有の極めて重要な規定です。労働基準法第41条は、農業・畜産業等に従事する労働者について労働時間、休憩、休日に関する規定を適用除外としています。この適用除外により、農業では法定労働時間や週休制、割増賃金の規制が及ばないという特殊な状況が生じてきました。
育成就労外国人については労働基準法第41条の規定を適用しないこととしていることを、待遇の基準として明確に要求しています。
労働者派遣形態での受入れ
農業分野は、労働者派遣形態での受入れが認められている数少ない分野です。
冬場は農作業ができないなど季節による作業の繁閑があること、同じ地域であっても作目による収穫や定植等の農作業のピーク時が異なることが理由とされています。
育成就労法は「労働者派遣等育成就労産業分野」という概念を設けており、農業分野と漁業分野がこれに該当することが想定されています。
転籍ルール
育成就労制度では、技能実習と異なり本人の意向による転籍が認められます。ただし無制限ではなく、転籍制限期間の経過、技能水準・日本語能力水準の充足、同一業務区分内であること、転籍先が優良な育成就労実施者であることなどの要件を満たす必要があります。
農業分野の転籍制限期間は1年です。 基本方針は転籍制限期間を1年とすることを目指しつつ、当分の間は分野ごとに1年から2年までの範囲内で設定することとしており、農業分野は原則どおりの1年をしています。
特定技能1号への移行
育成就労を終了した外国人が特定技能1号に移行するには、技能水準として特定技能1号評価試験または育成就労評価試験(専門級)に合格し、日本語能力水準としてA2.2相当以上を満たす必要があります。育成就労を適切に修了すれば、そのまま特定技能1号の技能要件を満たす設計になっています。
特定技能1号の雇用形態について、農業分野は直接雇用形態と労働者派遣形態の双方が認められています。育成就労と同様、派遣を活用できる点が農業分野の特徴です。
愛知県の農業経営者が今から準備すべきこと
愛知県は農業産出額が全国上位の県で、渥美半島の施設園芸(電照菊、トマト、キャベツ)、知多半島の畜産、西三河の露地野菜など、技能実習生の受入れ実績は多いです。
- 労働基準法第41条の適用除外を前提とした労務管理
- 労働者を6月以上継続して雇用した経験があるかの確認
- 在籍する技能実習生の人数と在留期限の確認、受入れ人数枠を計算
- 農業育成就労協議会の加入準備
スムーズな受け入れを行うために早期からスケジュールに余裕を持った準備が重要です。
よくある質問
-
家族経営で常時雇用の実績がありませんが、育成就労外国人を受け入れられますか。
-
直接雇用の場合、労働者を6月以上継続して雇用した経験またはこれに準ずる経験が必要です。
-
農業は労働基準法の労働時間規制が適用除外のはずですが、育成就労でも同じですか。
-
育成就労外国人について労働基準法第41条の規定を適用しないことを待遇の基準とされています。
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